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Vol.5 タバコは有害か
Vol.6 花粉症の季節だ
Vol.7 腰痛の予防について
Vol.8 胃・十二指腸潰瘍の薬
Vol.9 40才代以上の10人に1人は糖尿病


Vol.8
胃・十二指腸潰瘍の夢の薬とは!

  高木 敏(消化器内科)
胃・十二指腸潰瘍の様な消化性潰瘍は、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカー(ザンタック、ガスター)やプロトンポンプ阻害剤(オメプラール、タケプロン)の出現で殆ど治る様になりました。しかし、潰瘍は一旦治っても再発しやすく、1年目の再発率は20%、5年で50%と年数を経るにつれ増加していきます。
2ヶ月位で潰瘍が良くなってもH2ブロッカーを続けていれば、、勿論再発率は低下します。飲んだり飲まなかったりした例では、再発率は30%でした。

さて、胃の中は強い酸があるので菌は生きていないと今まで考えられていたのですが、1983年マーシャルとワーレンが人の胃粘膜に細菌が感染していることを発表しました。それがヘリコバクター・ピロリ(HP)菌です。
研究が進むにつれて、この菌が胃粘膜の病変と関わりのあることが明らかになって来ました。消化性潰瘍の人では、この菌の陽性率が同じ年齢の健康な人より高く、HP菌を薬で排除すると再発が抑制されることが分かって来ました。

十二指腸潰瘍1881例(27調査)では、HP菌陽性群の1年後再発率は58%でしたが、HP菌陰性群では2.6%と極めて低率でした。
胃潰瘍についても1年での再発率は、HP菌陽性群で53%に対して、HP菌陰性群では2%でした。
現在、プロトンポンプ阻害剤と抗生物質のアモキシリンを1440例の潰瘍患者に2週間服用してもらうとヘリコバクターピロリ菌が60%排除出来ました。

また、慢性胃炎を持っている人では、この菌の陽性率が80%と極めて高いことが分かっています。実験動物にHP菌を感染させると急性胃炎が起こるが、その後1ヶ月で内視鏡的には異常所見がなくても組織学的には胃炎が持続していま す。
慢性胃炎から胃ガンになることが以前より考えられているのでHP菌と胃ガンとの関係も興味が持たれています。この菌は、食べ物ではなく水を介して感染すると 考えられています。胃の中の菌と口の中の菌のDNAが一致したこと、また、便からの菌培養にも成功していることから汚染された水を飲むことで感染するのでは ないかと推定されています。

日本の場合、健康な人の陽性率は0〜9歳5.3%、10〜19歳18.6%、20〜29歳25%と年間1%づつ増加しますが、40歳以上では急激に上昇して75%に達してプラートになります。でも、小児期の十二指腸潰瘍ではピロリ菌の陽性率が 80%でした。

1994年に米国のNIHのカンファランスで次のような勧告が出ました。
1:HP菌陽性の消化性潰瘍は初発、再発を問わず胃潰瘍も十二指腸潰瘍も
  全て酸分泌抑制剤に加えて抗菌薬でHP菌を排除する治療をしなさい。
2:HP菌陽性の胃炎は、治療して良いかどうか分からない。
3:HP菌と胃ガンとの関連はまだ検討しなければならない。
この疑問点については、日本でも検討中です。

さて、消化性潰瘍の人で再発を繰り返している人はHP菌を排除する治療を希望するかもしれませんが、残念ながら保険が通らないので自費になります。どうしてもという方は専門病院を紹介します。
健康な人でもHP菌が50%以上陽性であることも問題です。また、HP菌の除菌に成功しても統計的には13年後には50%が再発する事になっています。
まだ、早急にやらなくていいかもしれません。
今のところは、私は2年位薬を服用する事を勧めます。それとライフスタイルを変えてストレス対策を考えます。

ストレスが加わると潰瘍が発生しやすい事が分かっています。
仕事が多忙、人間関係の悩み、不規則な食事、寝不足、収入の減少などです。
喫煙は胃粘膜血流が低下するので防御機構が低下して潰瘍になりやすいし治りにくい。
高濃度のアルコールも胃粘膜の関門を傷害して潰瘍を作ります。
几帳面で、決して愚痴を言わない人、人から頼まれると断れない、いつもにっちもさっちも行かない状態、それでいて自分には厳しい、調子が悪くても人の体の ようにあまり気にしない。忙しいとき悪化するということを承知していても忙しかったから薬を取りに来られなかったと言い訳をする。

こういう人は、自分を改めない限り潰瘍は再発します。自分にやさしく、毎日体の中の悲鳴に耳を傾けるようにします。仕事は目一杯しないで力を温存するように する。毎朝鏡に向かって「お前は偉い」と褒める。目標は短期と長期に分け、短期は一日で出来る簡単な目標を作り達成されたら寝る前に「よくやったね」と労を ねぎらう。ゆとりと解放された自由な時間を持つことが潰瘍再発防止にもっとも大切な事です。


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